「子どもの失敗はできるだけ避けたほうが良い?」
「子どもが失敗したとき、親はどうやってフォローしてあげると良いんだろう」
学校や家庭、習い事などさまざまな場面で子どもの失敗はつきものです。
失敗して落ち込む子どもの姿を見ると「あまり失敗は良くないことなのかな……」と悩んでしまいますよね。
結論、失敗の経験は、子どもが強く生きていく力を身につけるうえで欠かせないプロセスです。
失敗から成功につなげる手段を考える過程で、自分の行動を振り返る思考力や、最後まで諦めない粘り強さを身につけられます。
ただし、単純に失敗の経験を積ませるだけだと「恥ずかしい」「悲しい」という気持ちだけが強く残り、子どもが大きく自信を失うかもしれません。
何事にも恐れず挑戦できる気持ちを育てるためには、失敗から学ぶことの大切さを実感できる親の関わりが重要です。
そこで本記事では、小学校教員として多くの子どもが失敗する場面を見てきた筆者が、失敗を学びに変える対応例や、前向きに挑戦できる気持ちを育むコツを解説します。
本記事で紹介している方法を実践できれば、子どもは自信を持って新しいことに挑戦し、失敗しても諦めずに乗り越えられるでしょう。
子どもの失敗を成長のチャンスに変えたい方は、ぜひ参考にしてください。

子どもが落ち込む姿を見ると、心が痛くなってしまいますよね…。失敗を成長につなげるアプローチができれば、子どもの笑顔もきっとたくさん増えますよ!
失敗の経験は子どもの成長に欠かせないプロセス

冒頭でも伝えたとおり、失敗の経験は子どもが強く生きていくために必要な力を身につけるうえで、欠かせないプロセスです。
失敗の経験には、子どもの成長につながる学びが豊富に詰まっています。
たとえば、学校で給食をこぼしてしまったとき、子どもは「やってしまった」という気持ちと同時に、以下のことを実感するでしょう。
- お皿を持ったまま走ったのが良くなかったのかもしれない
- 次からお皿を持っているときは周りを見てゆっくり歩こう
- 自分と同じことをしている友達がいたら注意してあげよう
これらの学びは、先生や親に教えてもらうだけでは簡単に気づけないことです。
失敗を経験したからこそ、何がいけなかったのか、次からどうすれば良いのかを深く理解し、成功につなげられます。
子どもが困難を乗り越えて成長するためには、失敗を前向きに受け止める親の関わりも欠かせません。
子どもが失敗したときの適切な対応を理解し、何事にも積極的に取り組める気持ちを育みましょう。
【場面別】子どもの失敗を学びに変える対応・声かけ例5選

子どもの失敗を成長につなげるためには、状況に応じた親の適切な関わりが必要です。
ただ、子どもが失敗して落ち込んでいる様子を見ると、どのように声をかけるべきか悩んでしまいますよね。
そこで、本章では家庭や学校でありがちな場面をいくつか挙げて、親の正しい対応例を紹介していきます。
「この失敗は特に多い」と思うものから、ぜひ試してみてください。
1.コップやお皿を割ってしまった
家庭でのよくある失敗としては、コップやお皿を割ってしまう場面が挙げられます。
コップが手に当たって落ちた、お皿を強く置いたために割れたなどの場面に遭遇したときは、以下のように声をかけてみましょう。
- びっくりしたね、ケガはしていない?大丈夫?
- 大事な物が使えなくなったら悲しいよね
- 片手で持っていたんだね。じゃあ次からは両手で持とうね
- お皿が重いときは無理しなくても良いんだよ
子どもの不安を和らげるには、まず安全を確認して「びっくりしたね」と共感を示すことが大切です。
「物が壊れたらどう感じるのか」という視点で行動を振り返ると、子どもは自分のしたことを素直に受け止め、物を大事にする気持ちも育まれます。
そのうえで、具体的な解決策を示したり一緒に考えたりすれば「次から気をつけよう」と、前向きに自分の行動を改善できるでしょう。
2.家庭でのルールを破ってしまった
「ゲームは1日30分」「おやつは宿題が終わってから」といった、家庭のルールを破ってしまうのも、よくある失敗です。
子どもが決まりを守れないのは、なぜそのルールが必要なのか、なぜ破るとダメなのかを理解していないことが原因かもしれません。
そのため、子どもが失敗したときは、以下の声かけでルールを守ることの大切さに気づかせるようにしましょう。
ここでは、約束の時間を超えてゲームをしてしまった場合の対応例を紹介します。
- ゲームは30分までだったけど、今日はどれくらいやっていたのかな?
- やめたくない気持ちはわかるよ。もう少しでクリアできそうだったの?
- ゲームの約束を決めたのは、あなたの目や体を守るためだったよね
- どうしても自分でやめられないときは、どうすれば良いと思う?
家庭のルールを破ったからといって、頭ごなしに叱ると、子どもは怒られないために嘘をつく癖がついてしまいます。
そのため、まずは話しやすい雰囲気をつくって子どもの正直な気持ちを聞き出し、何のためにルールがあるのかを伝えましょう。
家庭のルールは自分や家族のためにあることが伝わると、子どもは納得し、積極的に解決策を考えられます。
3.学校に忘れ物をしてしまった
学校に忘れ物をするのは、低学年の子どもによく見られる失敗です。学校の準備に慣れていないため、入念に時間割をチェックしても、つい忘れてしまいます。
忘れ物の失敗から学びを得て成長につなげるには、以下のように声をかけて一緒に解決策を考えましょう。
- 忘れ物をして困っちゃったよね。次からどうすれば良いかな?
- 学校に行く前、もう1回忘れ物がないか一緒にチェックしてみようか
- 毎日しっかり準備しているのは知っているよ。いつも頑張ってえらいね
子どもが落ち込んでいる場合は特に、「悔しい」「悲しい」といった気持ちに寄り添うことが大切です。
その後、忘れ物をなくすために試行錯誤することで、計画的に物事を進める力や自己管理能力が身についていきます。
どうしても忘れ物が減らないときは、根本的な原因を解消する必要があるかもしれません。子どもの忘れ物が気になる方は、以下の記事もチェックしてみてください。

4.朝早く起きれず遅刻してしまった
連休や長期休暇明けは特に、生活習慣が乱れて朝起きれず、学校に遅刻してしまうこともあるでしょう。
一人だけ遅れて教室に入ると、クラスの人達からも注目されるため、恥ずかしい気持ちが強くなるかもしれません。
子どもが学校に遅刻して落ち込んでいるときは、家に帰ってきてから、以下のように声をかけてみてください。
- お母さん(お父さん)も遅刻したことはあるから焦る気持ちはよくわかるよ
- 明日からはどんなことに気をつけたら間に合いそうかな?
- 遅刻しない方法を自分で考えてえらいね!明日はきっと大丈夫だよ
親の失敗談を伝えると、子どもは「自分だけじゃないんだ」と安心できます。
失敗から成功につなげるモチベーションを上げるには、「きっと大丈夫」「いつでも味方だよ」と応援のメッセージを伝えるのもポイントです。
安心感を高める関わりを意識することで、子どもは失敗を繰り返さないための改善策を前向きに考えられます。
5.学校や習い事で先生に叱られた
学校や習い事に通っていると、先生に叱られて帰ってくることがあるかもしれません。
この経験を学びに変えるためには、以下の声かけで、叱られた状況や理由を丁寧に深堀りしてみてください。
- 何があって叱られたのか教えてくれる?
- 先生はこんなことを言いたかったんじゃないかな
- 誰にでも失敗はあるから大丈夫!これから少しずつ直していこうね
- また同じことがあったとき、次はどうすれば良いと思う?
- ちゃんと話してくれてありがとう。これからも応援してるよ
先生が本当に伝えたかったことや、「叱られる=ダメな子」ではないことがわかると、子どもは落ち着いて自分の行動を見直せます。
詳しい内容を話したがらない場合は、無理に聞き出さず「話したくなったらいつでも言ってね」と伝えておきましょう。
仮に理不尽な理由で叱られた場合も、まずは子どもの気持ちに寄り添い、どのように解決していくかを一緒に考えることが大切です。
子どもが失敗しないように先回りしすぎると成長を妨げる可能性がある

正直なところ、親としては自分の子どもになるべく失敗してほしくないですよね。「失敗することで余計に自信を失うのでは」と心配する方もいるのではないでしょうか。
かといって、失敗を回避するために、以下のような先回りの対応をするのはやめましょう。失敗から学ぶ機会がなくなり、子どもの成長を妨げてしまう可能性があります。
- チャレンジする前に子どものやることを細かく指示する
- 失敗しそうになったら子どもの代わりにすべてやってあげる
- 「これは失敗するかも」と感じたチャレンジを制限してしまう
子どもの行動が大きなケガにつながったり、他人に危害が及んだりする失敗については、親が先回りして止めなければなりません。
しかし、本人が乗り越えられる失敗であれば、困難に立ち向かう力を育てるためにも、あえて経験させることが大切です。

できることなら、子どもが落ち込んだり悲しんだりする姿は見たくないですよね…。そう思うのは、親として当然のことかもしれません。
先回りの対応をすると、結果的に子どもが失敗したときに立ち直れず、さまざまな場面で問題を抱える可能性もあります。
子どもの成長を支えるためには、失敗のリスクがあっても根気強く見守る姿勢を持ち、困ったときに手を差し伸べることを意識しましょう。
子どもの失敗に対してやってはいけない親のNG行為

失敗の経験を成長につなげるためには、学びの機会を奪ったり、自信を失わせたりする対応を避ける必要があります。
具体的なNG行為は、以下の3つです。
子どもは、親の表情や態度をよく見ています。無意識に上記の対応をしていないか、普段の行動を振り返ってみましょう。
感情的になって責める
子どもが失敗したとき、感情的になって「ダメでしょ!」「どうしてそんなことするの!」と責めるのはおすすめしません。
「失敗すると怒られる」という恐怖でいっぱいになり、新しいことに挑戦できなくなってしまいます。
たしかに、家の物を壊したり、何度も同じ失敗を繰り返されたりすると、ついイライラしてしまいますよね。
しかし、一方的に責められても子どもは「怒られた」という印象しか残らず、具体的な解決策を考えられなくなります。
失敗をして誰よりも落ち込んでいるのは、子ども自身です。子どもが失敗したときは「そんなこともあるよ」と前向きに受け止め、一緒に原因や解決策を考えましょう。

「子どもは失敗するもの」と納得できれば、失敗しても寛容な気持ちで余裕のある対応ができますよ。
あからさまに不機嫌な態度をとる
子どもが失敗したときに「あーあ」と大きなため息をついたり、わざと無視したりして不機嫌な態度をとるのもやめましょう。
厳しく叱らなかったとしても、子どもは親の反応から「自分が悪いんだ」と自己否定に陥り、常に顔色をうかがって過ごすようになります。
子どもの失敗に対して嫌な感情が芽生えるのは、親自身が「失敗=悪いこと」という考えに陥っているのかもしれません。
たしかに、失敗したときは「恥ずかしい」「悔しい」など、ネガティブな気持ちでいっぱいになりますよね。
しかし、何度も伝えているとおり、失敗の経験は子どもの成長にとって必要なプロセスです。
子どもの成長を支えるためにも、まずは親である自分自身の失敗に対するイメージを変えていきましょう。
子どもが考える前に解決策を提示する
子どもが失敗する姿を見ると、同じことを繰り返さないように、ついアドバイスや手助けをしたくなりますよね。
しかし、心配する気持ちが強いあまり、子どもが考える前に「これはどう?」と解決策を提示すると、学びの機会を得られず成長のチャンスを逃してしまいます。
親が代わりに解決してくれるため「誰かが何とかしてくれる」と他人任せな思考になり、自分の力で困難を乗り越えられなくなるかもしれません。
子どもの生きる力を伸ばすためには、ただ失敗を経験させるだけでなく、そこから何を学び、どう改善していくかを考えさせることが大切です。
時間がかかっても、まずは子どもが自分で考えることを優先し、どうしても解決策が思いつかないときにヒントを出すようにしましょう。

自分で考えた解決策が成功につながれば、子どもにとって大きな自信となり、失敗を恐れず挑戦できるようになりますよ。
失敗を恐れない子どもを育てる3つのコツ

失敗を恐れず、新しいことに挑戦できる気持ちを育てるためには、日々の関わりも工夫しましょう。
具体的な子育てのコツは、以下の3つです。
子どもが「失敗しても良いんだ」と安心できる親子関係を築けると、恐怖心を乗り越えてさまざまなことに挑戦できます。
1.親が失敗する姿を子どもに見せる
子どものチャレンジ精神を高めるためには、親が失敗する姿をあえて見せるのがおすすめです。
「親でも失敗することがあるんだ」と実感することで、子どもは失敗に対する恐怖や不安を乗り越えられます。
具体的には、以下の方法を試してみてください。
●失敗から解決のプロセスを見せる
親が失敗したときに「やっちゃった!これが良くなかったね。次は気をつけよう」と前向きに考える姿を見せると、子どもは「こうやって解決していけば良いんだ」と自信を持てるようになります。
●親が失敗した経験を話す
仕事や家事で失敗したときの気持ちや、どうやって乗り越えたかを話すことで「親も同じだったんだ」「失敗は恥ずかしいことじゃないんだ」と安心できます。
子どもは、親の姿を見て育つものです。親が失敗から学ぶ姿を見ることで、子どもは新しいことでも「まずはやってみよう」と前向きに取り組めます。
2.小さなチャレンジ経験を積ませる
失敗への恐怖心をなくし、困難を乗り越える力を身につけるには、日常生活の中で小さなチャレンジ経験を積ませてみましょう。
さまざまな経験を通して「ダメなときはこうすれば大丈夫」「失敗は怖くない」と実感できれば、困難に直面しても勇気を持って立ち向かえます。
日常生活で挑戦しやすいチャレンジは、以下のとおりです。子どもの得意分野や、趣味に合わせて取り入れてみてください。
- 簡単な手料理を作る
- 体を動かすアクティビティをする
- 地域のイベントに参加する
- 家のお手伝いをする
チャレンジは強制せず、子どもの意思を尊重して「試しにやってみる?」「一緒に行ってみない?」と聞くのがポイントです。
また、どのような結果でも「最後まで頑張ったね」「自分なりに工夫したんだね」といった、プラスの言葉をかけることも意識しましょう。
子どもは挑戦することの面白さを実感し、失敗を恐れず行動できるようになります。
3.結果よりも頑張った過程に目を向ける
子どもを褒めるとき、多くの人はどうしても「成功した」という結果に目が行きがちです。
しかし、成功したときばかり褒められると、子どもは無意識のうちに「成功=良いこと」「失敗=悪いこと」と考えるようになってしまいます。
失敗を恐れない気持ちを育てるためには、日頃から結果よりも頑張った過程に目を向け、以下のポジティブな言葉を伝えましょう。
- 最後まで諦めずにやりきったね
- 毎日コツコツ続けていたの、ちゃんと見てたよ
- 難しそうだったのに自分で考えてやってみたんだね
- 頑張りたい気持ちはちゃんと伝わってきたよ
- どんな結果になっても大丈夫だよ
自分の頑張りを見てくれていることが伝わると、子どもは「頑張って良かった」「結果だけがすべてじゃないんだ」と思えます。
成功や失敗に関係なく、ありのままの自分を受け入れてくれる存在は、子どもがあらゆる困難を乗り越える大きな原動力となるはずです。
まとめ

本記事では、子どもの失敗を学びに変える対応例やNG行為、失敗を恐れず挑戦できる気持ちを育てるコツを解説しました。
子どもの失敗を成長につなげるには、状況に応じて気持ちに寄り添ったり、一緒に解決策を考えたりするのがポイントです。
ただし、失敗しないように先回りしすぎる、感情的になって責めるなどの対応は子どもの成長を妨げる可能性があるため、できるだけ避けましょう。
日々の関わりでは以下のコツを押さえることで、失敗を恐れず、新しいことに挑戦できる子どもの気持ちを育てられます。
本記事を参考に、失敗することの大切さを子どもと共有し、安心して挑戦できる土台づくりをしていきましょう。