試し行動をする小学生の心理や対応方法とは?元小学校教員が解説

元小学校教員が解説!試し行動をする小学生の心理や対応方法とは

「こちらを試すように、わざと問題行動を起こす子の対応に困っている」
「注意しても逆効果で、どうしたら良いのかわからない」

試し行動とは大人の反応を見るために、子どもがわざと問題を起こす行為です。

試し行動は2歳頃からはじまり、幼児期の子どもに多く見られますが、生活環境やストレスによって小学生でも起きる場合があります。

悪いとわかっても問題行動をやめない様子を見ると、子どもが何をしたいのか理解できず、対応に悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

子どもに対して適切な対応をするためには、行動の裏に隠された本当の気持ちを理解し、愛情を伝えて安心感を高めることが重要です。

本記事では、試し行動の意味や具体例、小学生が試し行動をする心理やおすすめの対応方法について解説します。

記事内で紹介している方法を実践すれば、子どもに「この人なら信頼できる」と思ってもらい、お互いに安定した関係を築けるでしょう。

子どもの言動に振り回されず冷静に対処したいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。

私も教員時代は、子どもの試し行動に悩むことが多かったです…!子どもの安心感を高めるコツを紹介しているので、ぜひチェックしてみてくださいね。

試し行動とは

試し行動とは

試し行動とは、相手が自分をどこまで許してくれるのかを確認するためにおこなう、挑発的な言動のことです。

わざと問題行動を起こして「この人は本当に信頼できるのか」「自分は嫌われていないか」と、相手との関係性を確かめます。

基本的に子どもの問題行動は、善悪の区別がつかないために生じるケースがほとんどです。一方、試し行動は「やってはいけない」とわかったうえで周りを困らせる特徴があります。

ただ、多くの場合は試し行動かどうかを判断するのが難しく、子どもの言動に振り回される方も多いでしょう。どのように対応すれば良いのかわからず、自信を失う方もいるかもしれません。

ここで覚えておいてほしいのは「試し行動は子どもが『相手と信頼関係を築きたい』と思うからこそ生じる行為」だということです。

意図的に問題行動を起こす子どもの多くは、大人を信用したくてもできない不安を抱えています。子どもが試し行動をする目的を理解し、問題行動が続いても落ち着いて対応しましょう。

「子どもに嫌われているのかも……。」と思う必要はありませんよ!

試し行動の具体例を場面別にチェック

小学生の場合、子どもは以下の試し行動をすることが考えられます。

【授業中】
・教員の指示を無視する
・教室内を立ち歩く
・友達にちょっかいをかける
・周りの話を遮って発言する

【休み時間】
・何度注意しても廊下を走り回る
・友達への悪口や暴力を続ける
・遊びのルールを破る
・友達が持っているものを無理やり取る

【その他】
・給食中に食べ物をわざとこぼす
・掃除中に教室を抜け出す
・他学年の子にも嫌がらせをする
・周りの状況に関係なく過度に甘える

小学生の試し行動は、授業中だけでなくさまざまな場面で見られるでしょう。ときには、大人を困らせて楽しんでいるように見えるかもしれません。

しかし、試し行動をする子どもの多くは、根底に「安心して関係を築きたい」という不安な気持ちを抱えています。表面的な行動にとらわれず、原因を理解したうえで適切な対応をとりましょう。

小学生が試し行動をする3つの心理

小学生が試し行動をする3つの心理

小学生が試し行動をするとき、そこには3つの心理が隠されています。

  1. 大人からの愛情を確認したい
  2. 新しく出会った人を試したい
  3. 環境の変化による不安を解消したい

試し行動の裏にある気持ちを理解し、どのように対応するべきか具体的にイメージしましょう。

1.大人からの愛情を確認したい

小学生の試し行動に隠された心理の一つは、大人からの愛情を確認したいという気持ちです。

子どもは愛情不足を感じると「自分は本当に愛されているのか」と不安になり、試し行動をすることがあります。

たとえば、以下の状況に直面すると子どもは「誰も自分を受け入れてくれない」と感じるかもしれません。

  • 家庭で弟や妹が生まれ、両親が育児で忙しくなる
  • 学校で先生が他の子にかかりきりになる

愛情不足による試し行動は、必ずしも虐待経験や愛着障害がある子だけに見られる行為とは限りません。

周りの大人に注目される機会が少なくなることで、愛情不足を感じる可能性は誰にでもあります。

子どもが愛情確認のために試し行動をする場合は、コミュニケーションを増やして安心感を与えましょう。

愛着障害による試し行動は複雑化する可能性がある

愛着障害とは、幼少期における特定の養育者との愛着(情緒的な絆)形成に問題がある状態のことです。

幼少期に虐待されたり、何らかの理由で両親と引き離されたりした子どもは、愛着形成に問題を抱えやすいといわれています。

そのため、愛着障害がある子は人間関係で安心感を得にくく、試し行動をする可能性があります。深刻な愛着障害がある子だと、以下のように試し行動が複雑化するかもしれません。

  • 「先生は特別だよ」と愛情を示す一方で「◯◯してもいいなら、△△のルールは守ってあげる」と主導権を握る
  • 「先生大好き!」と甘えた翌日に「大嫌い」と言って他の教員に甘える姿を見せる

友達に嫌がらせしたり、ルールを破ったりする試し行動と違って本心をくみ取るのが難しいため、多くの方は困惑するでしょう。

試し行動が複雑化している場合でも、基本的な対応としては時間をかけて愛情を示し、安心感を与えることが大切です。

愛情を確かめたい子どもの気持ちを理解したうえで、冷静に対処しましょう。

私も子どもの暴言に落ち込みましたが、些細なコミュニケーションを積み重ねて少しずつ関係を築きました。

2.新しく出会った人を試したい

小学生の試し行動には、新しく出会った人を試したい心理も隠されています。意図的に問題行動を起こすことで相手を試し、どのような人かを知るのが目的です。

小学校の場合、新年度でクラスや担任の先生が変わったときに、以下のような試し行動が見られるでしょう。

  • 授業中におしゃべりしたり、突然立ち歩いたりする
  • 先生の指示にわざと反抗する
  • 給食・掃除の時間に遊ぶ

他にも、友達に危害を加えたり、先生の揚げ足を取ったりする場合があるかもしれません。

しかし、ここで指導を諦めたり何でも許したりしてしまうと、善悪の区別がつかなくなり問題行動がエスカレートする可能性があります。

良いこと・悪いことの線引きをはっきりさせて、メリハリのある指導を心がけましょう。

3.環境の変化による不安を解消したい

環境の変化による不安を解消するために、試し行動をする場合もあります。

大人に限らず、子どもであっても環境の変化にはストレスを感じるものです。

たとえば入学直後の1年生は、保育園や幼稚園の友達と離れて不安を抱えているかもしれません。

クラス替えのあとも、新しい先生や同級生と良好な関係を築くまではストレスを感じるでしょう。

また他の学校から転校してきた子は生活環境が大きく変わるため、不安を解消するために試し行動をする可能性があります。

環境の変化による不安から試し行動が生じている時は、まず子どもの気持ちを優しく受け止めましょう。

そのうえで、問題行動については「これはダメだよ」「次からはこうしようね」とはっきり伝えることが大切です。

試し行動の原因は色々とありますが、どんな場合でも感情的にならず子どもの気持ちに寄り添うのが基本です。

小学生の試し行動に対する適切な対応方法

小学生の試し行動に対する適切な対応方法

小学生の試し行動には、以下4つの方法で適切に対応しましょう。

厳しく注意するポイントと、優しく接するポイントを明確に分けることで、指導の基準がはっきりして対応しやすくなります。

一貫性のある指導ができると子どもの信頼感が高まり、試し行動の回数が少なくなっていきます。

ダメなものはダメだと伝える

試し行動に隠された気持ちを考えると「少しは問題行動を許したほうが良いのかな」と思ってしまいますよね。

しかし、子どもの問題行動を許容しすぎると、試し行動がエスカレートしたり善悪の判断をつけられなくなったりする可能性があります。

たとえ寂しさや不安から生じた行動であっても、ダメなものはダメだと伝えるようにしましょう。

ポイントは、子どもの人格を否定せず良くない行動に対してだけ注意することです。

たとえば、友達を叩いてしまった場合「君はダメな子」ではなく「友達を傷つけるのはダメなことだよ」と伝えます。そして「嫌な気持ちは言葉で伝えようね」と、適切な行動を具体的に教えましょう。

すぐには改善されないかもしれませんが、根気強く関わり、少しでも良い行動が見られたら褒めるようにすると、少しずつ試し行動が減っていきます。

子どもが自分のした行為を忘れないうちに、ダメな理由や適切な行動を伝えましょう。

問題行動の理由を聞いて気持ちを受け止める

子どもが試し行動をするときは、理由を聞いて気持ちを受け止めることも大切です。

小学生の場合、理由を聞かれても気持ちをうまく言語化できないかもしれません。

しかし、話を聞いて気持ちを理解しようとするだけでも「真剣に考えてくれている」と安心できる可能性があります

子どもから問題行動の理由を聞く時は、以下のポイントを意識しましょう。

  • 最後まで話を聞く
  • 子どもに目線を合わせる
  • 子どものペースに合わせて相槌を打つ

話を遮ったり中断したりせず最後までしっかり聞くと、子どもは「自分の気持ちを受け止めてくれた」と感じやすくなります。

また、子どもの話すスピードやテンションに合わせながら相槌を打つことで、安心感を与えられるでしょう。

試し行動の理由がわかったら「◯◯が嫌だったんだね」「寂しかったんだね」と、共感することも重要です。優しく気持ちに寄り添うことで、子どもは先生からの愛情を実感できます。

私の場合、話を要約するイメージで子どもの気持ちを言語化していました。

積極的に褒める機会をつくる

小学生の試し行動をなくすには、スキンシップで愛情表現をする方法も効果的です。しかし、先生は保護者と違って、子どもにスキンシップをとるのが難しいかもしれません。

そこで、スキンシップの代わりに褒める機会を積極的につくりましょう

試し行動が改善されたときはもちろん、他の場面でも子どもの頑張りを褒めることで、安心感や信頼につながります。

たとえば、先生の指示を無視する子の行動が改善されたときは「話を聞いてくれてありがとう」と褒めるようにします。

「挨拶が元気で気持ちいいね」「ノートの書き方が丁寧だね」など、些細なことも褒めると先生からの愛情を感じられるかもしれません。

スキンシップができなくても積極的に話したり遊んだりすることで、子どもの満足度が高まり気持ちが安定する場合もあります。

子どもが試し行動を繰り返す時は「ダメなものはダメ」と教えるのはもちろん、たくさん褒めて愛情を伝えることも大切です。

過剰に反応せず普段どおりの対応を心がける

子どもの試し行動に対し、過剰に反応しないことも心がけましょう。

多くの先生は、試し行動を見た時に「早く何とかしなければ」という思いから、必要以上に反応してしまうかもしれません。

しかし試し行動のときだけ注目したり愛情を伝えたりすると、子どもは「こうすれば自分を見てくれる」と誤って学習し、同じ方法で先生の気を引こうとするでしょう。

これでは試し行動が減るどころか、ますますエスカレートするだけです。試し行動を見た他の子が真似をして、収拾がつかなくなる可能性もあります。

このような誤学習を防ぐためには、試し行動が起こっても普段通りの対応を心がけることが大切です。

日頃から積極的に褒めるのはもちろん、試し行動をした時は子どもの気持ちを受け止めつつ、良くない行動についてしっかりと注意しましょう。

試し行動の有無にかかわらず、いつも同じ対応をすることで一貫性のある指導ができます。

試し行動と反抗期を見極めるポイント

試し行動と反抗期を見極めるポイント

試し行動と反抗期の言動は似ている部分が多く見分けがつきにくいため、指導をするときには注意が必要です。

反抗期とは子どもが大人の価値観に激しく対抗したり、否定したりする時期のことです。反抗期は高学年で始まるといわれていますが、低学年や中学年の子どもに見られる場合もあります。

一方、試し行動は「どこまで許されるか確かめたい」「愛されたい」という気持ちを強く持っているのが特徴です。

表面的に見られる行動はどちらも同じですが、以下の点において大きな違いがあります。

  • 試し行動:相手の顔色を確かめながら問題行動を起こす
  • 反抗期:相手の反応をあまり気にしていない

先生をチラチラと見たり、近くにいる時だけ問題行動を起こしたりする場合は、試し行動の可能性が高いと考えられます。

試し行動と反抗期いずれの場合も、適切な対応をするためには以下のポイントを押さえることが大切です。

  • 感情的にならず落ち着いて話を聞く
  • ダメなことはダメだとはっきり伝える
  • 子どもの気持ちを肯定的に受け止める
  • 悩みがあるときは解決策を一緒に考える

大人が最後まで突き放さず、真剣に向き合ってくれると子どもの安心感は高まり、少しずつ問題行動も減っていくでしょう。

小学生の試し行動に関するよくある質問

小学生の試し行動に関するよくある質問

ここからは、小学生の試し行動によくある質問を紹介します。

それぞれ詳しく見ていきましょう。

Q.試し行動を無視するとどうなる?

小学生の試し行動は「相手を信頼しても大丈夫か」「自分は嫌われていないか」を確かめるために行う行為です。

そのため、試し行動を無視すると子どもの「信頼したい」「愛情を確認したい」という欲求が満たされず、事態が悪化する可能性があります。

ほかにも、以下のような対応は避けましょう。

  • 乱暴な言葉を浴びせる
  • 子どもの人格を否定する
  • 他の子と比較して非難する

大人に乱暴な言葉を浴びせられると、子どもは恐怖心を覚えます。「他の子はルールを守っているのに、どうしてあなたはできないの?」と、他の子と比較して非難する対応もNGです。

子どもの試し行動には無視や暴言ではなく、気持ちを受け止めたうえで「なぜダメなのか」を丁寧に伝えましょう。

Q.発達障害がある子の試し行動にはどう対処したらいい?

発達障害がある子どもは、以下の特性によって、本人に悪気がなくても問題行動をしたと勘違いされる場合があります。

そのため、発達障害がある子どもに問題が見られた場合は、まずその行為が試し行動によるものかどうかを見極めましょう。

  • 集中力が続かずじっと座っていられない
  • 衝動的な感情を抑えられない
  • こだわりが強くルールを守れない
  • 相手の気持ちを汲み取るのが難しい

発達障害がある子の試し行動を見極めるには、その行為が意図的かどうかに注目するのがポイントです。わざと騒ぐ、ルールを破るなどの場合は試し行動の可能性があります。

試し行動であることが判明したら、子どもの特性に合わせつつ、積極的に褒めたり適切な行動をわかりやすく説明して安心感を高めましょう。

発達障害の子は周りに比べて苦手なことが多く、自信を持てないために試し行動をする場合があります。小さな目標の設定と達成を繰り返し、徐々に自信をつけると試し行動も減るはずです。

私は、子どもが目標を達成したらシールを貼ったりスタンプを押したりして、わかりやすく達成感を得られるようにしていました!

Q.中学生や大人でも試し行動をすることはある?

中学生や大人になっても、本人が「愛されていない」「自分の存在を認めてもらえない」と感じている場合は試し行動をする可能性があります。

中学生だと学校での問題行動が目立つほか、飲酒・喫煙などの不良行為や法律に触れる行為を犯してしまうかもしれません。

大人でも愛情確認のために友達や恋人、家族に試し行動をするケースが見られます。

中学生や大人の試し行動についても、相手の気持ちを受け止めたり愛情を伝えたりすることで安心感を与えられます。

周りに危害が及んでいる、問題行動を止められない場合は、一人で抱えず専門家や医療機関に相談しましょう

まとめ

まとめ

小学生の試し行動は、どこまで自分を許してくれるかを探ることで大人からの愛情を確かめる行為です。

そのため子どもの試し行動が見られた場合は、先生が積極的に褒めたりコミュニケーションをとったりすることで愛情を伝える必要があります。

先生からの愛情を実感し、自分の気持ちを受け止めてもらうことで子どもの試し行動は徐々に減るはずです。

本記事で解説したポイントを押さえ、試し行動を繰り返す子に粘り強く対応し、安定した信頼関係を築きましょう。